目次
はじめに
ソフトウェア開発の見積もり手法の一つに、FP法(Function Point法) があります。
FP法は、プログラムの行数や工数ではなく、ユーザに提供する機能の数と複雑さに基づいて開発規模を定量化する方法です。
この記事では、令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10 を題材に、FP法による見積もりの手順を解説します。
問題概要
売上管理を行うアプリケーションソフトウェアの規模をFP法により算出します。
条件は以下の通りです。
- トランザクションファンクションの未調整FP(UFP)の算出には、表2〜表4を用いる。
- データファンクションの未調整FPは 33 である。
- 調整要因(VAF)は 0.9 である。
入力データとして与えられた要素処理は次の通りです。
要素処理 | ファンクション | 関連ファイル数 | データ項目数 |
---|---|---|---|
① | 外部入力(EI) | 1 | 8 |
② | 外部照会(EQ) | 3 | 21 |
③ | 外部照会(EQ) | 1 | 12 |
④ | 外部出力(EO) | 2 | 10 |
複雑度判定表
表2:複雑さ(外部入力)
関連ファイル数\データ項目数 | 1〜4 | 5〜15 | 16以上 |
---|---|---|---|
0〜1 | 低 | 低 | 中 |
2 | 低 | 中 | 高 |
3以上 | 中 | 高 | 高 |
表3:複雑さ(外部出力、外部照会)
関連ファイル数\データ項目数 | 1〜5 | 6〜19 | 20以上 |
---|---|---|---|
0〜1 | 低 | 低 | 中 |
2〜3 | 低 | 中 | 高 |
4以上 | 中 | 高 | 高 |
表4:未調整ファンクションポイント
ファンクション | 低 | 中 | 高 |
---|---|---|---|
外部入力(EI) | 3 | 4 | 6 |
外部出力(EO) | 4 | 5 | 7 |
外部照会(EQ) | 3 | 4 | 6 |
解法の流れ
- 各要素処理の 関連ファイル数(FTR) と データ項目数(DET) を基に、表2・表3から複雑度(低/中/高)を判定。
- 表4から未調整FPを割り当てる。
- トランザクションファンクションの合計UFPを算出。
- データファンクション(33 FP)を加えて総UFPを求める。
- 調整要因(VAF=0.9)を掛けて調整済みFPを計算。
計算過程
① 外部入力(EI)
- 関連ファイル数:1
- データ項目数:8
→ 表2より「低」
→ 表4より EI(低)= 3 FP
② 外部照会(EQ)
- 関連ファイル数:3
- データ項目数:21
→ 表3より「高」
→ 表4より EQ(高)= 6 FP
③ 外部照会(EQ)
- 関連ファイル数:1
- データ項目数:12
→ 表3より「低」
→ 表4より EQ(低)= 3 FP
④ 外部出力(EO)
- 関連ファイル数:2
- データ項目数:10
→ 表3より「中」
→ 表4より EO(中)= 5 FP
トランザクションファンクションの合計
- ① 3 FP
- ② 6 FP
- ③ 3 FP
- ④ 5 FP
合計 = 17 FP
全体の未調整FP(UFP)
- データファンクション:33 FP
- トランザクションファンクション:17 FP
合計 = 50 FP
調整後のFP
- UFP = 50
- VAF = 0.9
- 調整済みFP = 50 × 0.9 = 45 FP
まとめ
今回の問題では、FP法の基本的な手順を次のように確認しました。
- DET/FTRを数えて複雑度を判定
- 複雑度に応じてFP値を割り当て
- データファンクションと合計し、UFPを算出
- 調整係数(VAF)を掛けて最終的なFPを求める
最終的に求められた調整後のファンクションポイントは 45 FP でした。
FP法は、開発初期段階でも客観的な規模見積りを可能にする手法です。
プロジェクトマネージャ試験では、暗記ではなく「規格に基づいた数え方と計算手順を理解しているか」が問われます。
実務でも役立つ知識なので、問題演習を通して手順に慣れておくと良いでしょう。
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